2022年採択企業 インタビューVol.4

行動変容の力で、

保険契約者様のさらなる

ウェルビーイングを実現していく

2023/03
行動変容の力で、保険契約者様のさらなるウェルビーイングを実現していく
2022年3月から始まったかんぽ生命 - アフラック Acceleration Program(以下、本プログラム)。2つの大手保険会社が提携し、新しい取り組みに踏み出す本プログラムは、多くのスタートアップからの注目を集めています。前回に引き続き株式会社Godot(以下、Godot)より代表取締役の森山さんをお迎えし、今回は株式会社かんぽ生命保険(以下、かんぽ生命)の重松さんと共に今回の取り組みについてお話していただきました。

今回の対談の参加者
Godot 代表取締役兼CEO 森山 健
ゴールドマン・サックス投資銀行部門に新卒入社。その後、3社の共同創業と売却、オックスフォード大学客員研究員などを経て現職。行動科学とデザイン思考で政策課題に挑むNPO法人PolicyGarageの理事も務める。

かんぽ生命 重松 淳
1989年アメリカンファミリー生命保険(現アフラック生命保険)入社、お客様サービス 推進部長、企画部長を経て2015年同社執行役員に。2021年よりかんぽ生命に役員派遣され、現在は執行役(営業企画部/サービス企画部担当執行役補佐)を務める。

本プログラムの背景
日本郵政株式会社、日本郵便株式会社および株式会社かんぽ生命保険とアフラック生命保険株式会社は、がん保険販売を始めとする様々な分野での取り組みを通じ、長年にわたり提携パートナーシップを深化させてきました。がん保険の販売推進に加えて、新たな協業や地域・社会の課題の解決を通じた共有価値の創造の取り組みの一環として、2022年から本プログラムを実施しています。

個別化エンジンを活用して、お客様の体験価値を向上させる。

前回の対談(※)で、Godotの事業内容や本プログラムへの応募のきっかけについてご説明いただきました。本プログラムで初めてGodotに出会った重松さんですが、どのような印象を持ちましたか?
(※)前回の対談記事:「個別化エンジン」で、一人も取りこぼさない子宮頸がん対策を実現する
重松
正直申し上げて、最初は半信半疑でした。行動変容を生み出す仕組みに関しても、そんな都合の良いコミュニケーションのデザインがあるのかと言った印象でしたね。(笑)しかし、私たちの抱える課題がGodotさんとの協業で少しでも解決することができるならと採択を決めました。
森山
かんぽ生命には、保険商品のご契約者様に加え、全国の郵便局を利用するお客様という膨大な生活者のデータが揃っています。私たちの持つ個別化エンジンの強みをどう生かすことができるか、どのように対象者の特性をあぶり出して行動変容に繋げられるか。ぜひチャレンジしたいと思いましたね。
かんぽ生命が抱えていた課題について、教えてください。
重松
私たちは多くの種類の保険商品を取り扱っているのですが、中でも保険期間が決まっている、つまり満期のある保険を多くの方にご加入いただいています。お客様に「満期後」をお考えいただくきっかけとして、もちろん人を介したコミュニケーションが必要なのですが、そこをサポートする上で、メールも大事な媒体になります。ですが、そのメールや添付している動画が本当に有効に機能しているのか気になっていました。
森山
かんぽ生命さんが大切にしているのが「ひとりひとりに寄り添うコミュニケーション」。せっかくお一人おひとりに対して丁寧にコミュニケーションをとっているのに、もったいないと感じましたね。
重松
そうなんです。私たちは、中期経営計画においてもお客様体験価値(CX)の向上にむけた、「お客様とのつながりを重視したアフターフォローを充実させ、お客様ニーズに応える高頻度でのお客様接点を創出する」ことを掲げています。その一環として、今回Godotさんと協業し、満期のご案内をするメールをより効果的なものにできるよう、見直しの試行を実施することにしました。
森山
保険の満期をご案内するというのは、単なるアナウンスではなく、かんぽ生命のお客様に寄り添う姿勢を伝え、これからの信頼関係を築くきっかけにもなっていきます。どこまで人の手が介在し、どこからをシステムで補っていくのか。いわゆる「ハイタッチ」と「テックタッチ」のバランスが重要になってくるのではないかと感じていました。

お客様自らがよりよい意思決定をできるような環境づくりを。

具体的にどのようにして施策を打ち出していったのですか?
重松
私たちが具体的に求めていたのは、当然ですが、まずはメールを開封いただくこと。その上で、添付してある動画を視聴いただき、保険加入当時の気持ちを思い起こしたり、今後の人生に何が必要かを考えるきっかけにしていただくことでした。その上でランディングページへのリンクをクリックいただき、ご自身の興味・関心事に適したコンテンツ・お悩み事や関心事の解決に向けた情報を手に入れていってもらいたいと考えていました。
森山
今回の対象者は膨大な数にのぼりますので、いきなり個別化したメールを作っていくのは困難であると判断。そこで、まずは対象者を刺激し、行動変容のきっかけになるような情報を抽出していくことにしました。私たちは物事を「属性」に分類して判断しがちですが、ここで大切なのは「特性」。年齢や性別だけでなく、どんなライフスタイルを送ってきたのか、どのような行動志向があるのかも含めてターゲットを分析しました。
重松
「属性」ではなく「特性」というお話には、保険を扱う私たちも共感できる部分がありますね。お客様をとりまく環境ニーズは本当に千差万別であり、保険商品もそれぞれに合ったものである必要がありますから。
森山
取り組みを進めていく中で、本当にかんぽ生命がカスタマーサクセスを大切にしているということを実感しています。“手段を選ばず何がなんでも行動変容を生む”などということは決してせず、あくまでも、お客様によりよい意思決定をしていただける環境を整えることを意識しながら事業設計を進めていきました。

行動変容の先で目指すのは、かんぽ生命のNPSの向上。

今回のプログラムを通して、新たな発見や課題などはありましたか?
森山
かんぽ生命では、実はお客様に合わせて満期のお知らせを「メール」だけでなく「マイページからのお知らせ」などいくつかの媒体を通じて行っていましたよね。それぞれの媒体の特性も分析して仮説を立てながら設計を進めたのですが、面白い発見がありました。
重松
どのようなことですか?
森山
意外にも、高齢者の方がSMSを開封して文面を読む傾向があるとわかりました。メッセージの構成や、見せ方を変えていけば動画の閲覧率や、Webサイトへのリンクのクリック率のアップも期待できるかもしれません。
重松
高齢のお客様がSMSとは確かに意外ですね。高齢の方以前の話として、社内ではこの取り組みにSMSを活用することが適当なのか議論になりましたので。おっしゃるとおり、お客様に不信と思われないような送信の仕方や見せ方の工夫によって効果的な媒体になるのかもしれません。
森山
冒頭でも触れていましたが、私たちは実際のところメールの開封や動画閲覧を通じてお客様の満足度を向上していくことを目指しています。今回のような取り組みを通じて、少しでもお客様の満足度向上、さらにいえばNPS(Net Promoter Score)向上につながる発見を増やしていき、かんぽ生命の商品開発や事業の成長に活かしていただければ幸いです。
重松
そうですね。お客様の満足度向上はもちろん、NPSは私たちも大変重視している指標ですから、スコア向上につなげていきたいところですね。企業が大切にしている世界観、提供する価値がお客様にどれほどフィットしているのかを図るのはとても難しいですし、狙ってスコアアップを図れるものでもありません。価値ある商品・サービスを提供し、愚直に、お客様から信頼いただける行動をすることに尽きると思います。

新しい価値を創造できるよう、ともに進化を続けていきたい。

今回の試行実施を経て、どのような所感をお持ちですか?
森山
かんぽ生命さんが昨年実施された施策では、メールなどのデジタルチャネルを活用したコミュニケーションについては一定の効果が得られた一方で、お客様ごとに適したコンテンツの提供や営業への寄与などの課題も見つかったと伺いました。かんぽ生命さんと弊社の協業で実施した今回は、前回の試行結果を踏まえ、行動科学の知見をもとにお客様ごとの特性等に応じたコンテンツや導線を用意し、 “次の備えの必要性を考えるきっかけ“の機会を創出していくことを目指しました。試行結果が明らかになるのはこれからですが、いい手応えはありました。
重松
ご提案ありがとうございます。スタートアップの機動力には本当に驚かされています。私たちは組織の規模も大きく、柔軟に動きにくい部分もあり、なかなか思うように進まなかったこともあったのではないでしょうか。にも関わらず、こうして次々と新たなご提案をいただくなど、可能性にチャレンジする姿勢は本当に見習わなければならないと思います。
森山
今回はターゲットをお客様に絞って行動変容を試みていますが、たとえば営業社員の皆さんの意識醸成などにも、今後私たちの技術を役立てていけそうだなとも考えています。可能性はまだまだ広がっていきますね!
本プログラムに参加することで、スタートアップはどのようなことが得られると思いますか?
森山
大手企業と協業したという経歴はスタートアップのブランド力を上げ、PMFを加速させる大きな原動力になると思います。重松さんは、かんぽ生命の組織の規模について触れていましたが、大きな組織にしかない、セキュリティーへの意識や守りの力があると思います。そう言ったカルチャーに触れる中で、私たち自身にも機微な情報の管理力、情報セキュリティーが鍛えられたようにも感じます。
重松
ありがとうございます。私たちも毎回大きな刺激を受けながらこのプログラムを進めてきました。一つのアプリやサービスが最適解になるわけではなく、複数のアイデアを組み合わせていくことで、多様化するニーズに応えていくことができます。私たちは、そのニーズやお客様の声をスタートアップに提供し、そして新しい価値をまたお客様にお届けすることができる。こうして、お客様ひとりひとりのウェルビーイングを叶えることができればと思います。
ところで、重松さんは気になっていたことがあったようですね。
重松
はい、素朴な疑問なのですが「Godot」という社名が気になっておりまして…。どんな意味なんですか?
森山
聞いていただきありがとうございます。込めた意味は「主人公であれ」ということ。ゴドーとは、アイルランドの劇作家、サミュエル・ベケットの戯曲「ゴドーを待ちながら」にちなんでいるのですが、これは不条理劇の代表的作品と言われていて、ゴドーが表すものは、生きる意味なのか、救世主なのではないのか、と多くの人が議論してきました。私たちは、そんな何かを待つ存在ではなく、自分自身が主人公になって、多くの人の幸せを作っていこうではないか。という願いを込めてこの社名にしたんです。
重松
そうだったのですね!最後に謎が解けてよかったです。「主人公であれ」というすばらしい意味が込められた社名だったのですね。私たちもこの業界の主人公であるという気持ちを持って、これからも尽力していきたいと思います。
対談は以上となります。お二人ともありがとうございました!
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